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雑誌「介護&リハ」に連載開始しました

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「生活リハビリに生かす解剖・生理・運動学」の知識と題して、連載をスタートしました。
要約して掲載します。ちょっと専門的な内容ですが、転倒予防で思うことをカラダと脳と環境に分けて書いてみました。明日から使えることをたくさん入れてますので、リハビリ介護に携わる人には役立つと思います。雑誌のページではイラストなども充実していますので、興味のある方はぜひお手に取って見てくださいね!


 

 

第一回「高齢者の転倒」を防ぐ解剖学・運動学の知識
はじめに
生活の中でリハビリの知識を生かして関わり、利用者を元気にする「生活リハビリの達人」になりませんか?これから6回に渡って、生活の視点から考えるリハビリについて書こうと思います。第一回は「高齢者の転倒」について考察します。

高齢者の転倒
高齢者の転倒は骨折などのけがにつながり、悪くすれば、そのまま寝たきりになってしまう大きなリスクを孕んでいます。よって通所サービスではできるだけ転倒予防に努める必要があります。転倒のリスクが高い人の特徴を理解し、転倒予防にしっかり取り組んでいきましょう。

転倒の原因
転倒の原因には多くの要素があります。今回は、多くの高齢者にみられる以下の3つの要因に着目し、アプローチについて述べます。
①身体機能的要因・・・筋力低下 関節可動域の低下 バランス能力の低下が代表的
②脳機能的要因・・・特に複数のタスクを同時に処理する脳機能の低下
③環境的要因 ・・・段差や傾斜 あるいは床に物が乱雑に置かれている状況

①身体機能的要因
筋力の低下
特に下肢の筋力の低下によりふらつきやつまずきが顕著にあらわれるため、下肢の筋力の維持・向上は日々の生活の中で心がけるようにしましょう。
・立ち上がり訓練  10回×3セット(※運動の回数・頻度は各利用者の状態に応じて加減してください)

下肢の筋力の向上を簡単に行うには、体重を支えながら立ち座りの練習をすると効果的です。
椅子からゆっくり立ち上がりと座る動作を繰り返します
とくにふらつきの強い人は手すりなどがある場所で行いましょう。
その他 効果的な運動
・股関節の屈曲運動 10回×3セット
・足関節の背屈運動  10回×3セット

関節可動域の低下
・足関節の背屈
足関節の筋力の低下については前述したが、関節可動域自体が極端に狭小化している場合も少なくない。正常可動域で20度程度の背屈があるが、高齢者をチェックすると多くの人は直角程度にしか背屈できないことが多い。

・膝関節の伸展 10回×3セット
膝関節も屈曲位となり、あまり伸びないことも多い。
姿勢が後方に倒れやすくなっている

バランス機能の低下
筋力や関節可動域など個々には問題がなくても、立位でのバランス能力が低下している場合があります。『FRT(Functional Reach Test)』といって、バランス能力を測定する簡単な検査があります。
【ファンクショナルリーチテスト ( FRT:Functional Reach Test)】
FRT測定距離15cm未満で転倒の可能性大。また、25cm以上の高齢者に対し、15cm未満の高齢者は転倒の危険が4倍あるとされています。

バランスと密接に関係している筋肉
バランスの悪化はいろんな要因が考えられるため、下肢の筋力で密接関係している筋肉を知っておいてください。それは中殿筋です。とくに片足立ちの時に体が傾くのを防ぐ役割をしており、この筋肉が弱くなると歩行時のふらつきが著明になります。
中殿筋のトレーニング 10回×3セット(座位でチューブを大腿に巻いて開く運動)

座位でのバランストレーニング  10回×3セット
座位で手を伸ばして、片方のお尻を浮かせるように大きく体幹を傾ける

②脳機能的要因
歩行時に話しかけると必ず立ち止まりながら、受け答えをする人を見たことがありませんか?この状態は脳が情報を処理する機能が低下しているサインと言われています。
たとえば歩行動作をしながら、あれこれ考えて話す、というのは脳が複数のタスクを同時に処理している状態です。若いうちはこの複数のタスクを並列的に処理するのに、とりわけ苦労をすることはなかった人でも、高齢になるにつれて、この処理がむずかしくなってくるのです。

転倒を予防するためにおすすめの脳の機能のトレーニング
1.会話しながら散歩する(計算やしりとりでもよい)

前述したように、話しかけると立ち止まってしまう人には、ゆっくりでいいので会話しながら散歩をすると効果的です。本人にも歩行しながら会話をするという練習を意識してもらうとよいでしょう。
歩行は屋外がオススメです。季節を感じたり、景色を眺め、それを言葉にするということが脳の活性化につながります。

お得情報・・・ 屋外で日光に当たることが、ビタミンDの生成、活性化につながり強い骨の生成につながります。

2.ダブルタスクトレーニング
椅子に座り、できるだけ早く足踏みをしながら、野菜の名前十個いう、というトレーニングです。脳の情報処理能力が低下していると物の名前を想起しようと努力すると必ず体の動きが止まってしまいます。体の動きを止めないように物を考えようとすると、名前がなかなか出てこない・・・。楽しみながら、行えるリハビリメニューです。
レクリエーションで輪になり、楽しい雰囲気で行うと盛り上がります。みんなで力を合わせて10個出るまでがんばってみるのもいいでしょう。

問題の例 野菜の名前
都道府県の名前
外国の名前
総理大臣の名前・・・

「え~トマト、きゅうり、え~ニンジン カボチャ・・・えっとえっと・・・」

お得情報:足踏みによる骨への適度な刺激が、強い骨をつくるのに有効

③環境的要因
在宅での転倒を繰り返す利用者も多いため、在宅環境を知り、その環境に合わせたリハビリメニューを提供しましょう。また住宅改修の提案なども可能であれば、チャレンジしていきましょう。

日本は湿気が多いため、地面から家の床を高くした設計で家が建てられています。そのため段差が多く存在し、その段差を越えるときに、転倒してしまうという事故も多くみられる。
またトイレに行く、外出から疲れて帰ってきた部屋などで転倒することもよく耳にします。その際、床に置きっぱなしになっているものにつまづくことも多いので、部屋の片づけも実は立派な転倒予防対策と言えるのです。送迎時、家族に床の片付けが転倒予防になることを伝え、意識付けをしていきましょう。
段差の上り下り
送迎車のステップを昇降するのも立派な段差昇降のリハビリメニューです。
できる範囲で取り組んでいきましょう。

送迎によって家屋の状況を知る通所サービスの職員が提案者となり、家族、ケアマネージャー、リハビリ専門職、工務店さん等多職種とともに住宅改修にも取り組んでいくことも立派なリハビリです。
手すりの設置
段差解消の住宅改修

※本連載では介護にまつわる多方面の知識を紹介していきます。おたのしみに~

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