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雑誌連載記事 生活リハビリの達人への道 其の18 「排泄クイズ選手権」

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雑誌ブリコラージュ12月号特集は「介護現場の看護職って?」とてもいいテーマです。連載中の「生活リハビリの達人への道」も第18回を数えます。「排泄クイズ選手権」と題して認知症に魔法の関わりとかクスリがあるかのごとくふれまわる人達に現場でまず大切にしたいこと「排泄ケア」をクイズ形式でお伝えしました。それではどぞ。

 

 

 

 

 

mission18「排泄クイズ選手権」

「ユマニチュード」を実践したら怒られた!?

認知症患者が落ち着く魔法の方法「ユマニチュード」の話を聞いて「ホントに認知症が治るのかな?そんな魔法があるなら使ってみよ~」と僕も施設の中を落ち着かずにウロウロしている認知症のヨシオさん(84歳)に試してみました。ユマニチュードの本に書いてあったように、落ち着かない人にはアイコンタクトが大事と思い、「ヨシオさんどうしましたか?」と笑顔で近寄ってみました。そして、やさしく触れるテクニックで、背中をさすってみると・・・。「いらんことするな!ワシは急いでおる!そこをどけ!」と突き飛ばされてしまいました。

「ヨシオさん、待ってください」と追いかけていくと、「ぷーん」と便の匂いがしてきました。あ、落ち着かなかったのはトイレを探してウロウロしてたんだ。(こんなときに笑顔で近寄ってベタベタされても落ち着くわけないじゃん!)と反省して、すぐにトイレにお連れすることにしました。

メデシンクイズ 第1問「排便のゴールデンタイムはいつ?」

ヨシオさんがトイレでスッキリされたので、一息ついていると煙がモクモクとたち、仙人が現れました。

「オマエ、いいところに気がついたな。トイレに行きたくてソワソワしている人に、笑顔で体をさすっても何の役にも立たんことがわかったじゃろう」

「そうですね。原因をしっかりみないと小手先のテクニックではダメなようです」

「介護には『排泄最優先の原則』という言葉がある。これをすっとばして、やれ笑顔のコミュニケーションだ!背中をマッサージだって小細工に走る奴が多いの~」「そうですね」と言いながら、さっき自分がヨシオさんにベタベタニマニマしたことが恥ずかしくなってきました。

「ところでオマエ、排便のゴールデンタイムはいつか知っておるか?この時にトイレに座ったら、必ず出る、そんなタイミングじゃ」

「うーん、食後が一番出やすいんじゃないかな?」

「チッチッチ!答えは『したいとき』じゃ!」

「なんですか!それ、ひっかけ問題じゃないですか~」

「ハハハ、オマエちょっと頭が固くなってるぞ。机の勉強ばかりではいかんぞ。排泄ケアの基本は行きたい時にしっかりトイレに座ることじゃ。まさかオマエ『トイレに行きたい』というご老人を『食後がでやすいから、ご飯食べたら行きましょう!』なんて言っておるのか?」

「まさか!仙人、僕たちの排泄ケアをバカにしないでください!」

「しかし!『行きたい』という人に『ちょっと待って』って返事してることが多いじゃろ?」

「えっ?(ドキッ)・・・そうですね」

「介護職の『ちょっと待って』のまた長いこと!業務に追われているうちにトイレに連れていくのを忘れてしまい、家に帰ってから思い出したことがあるじゃろ」

「わっ!(ズキッ)・・・見てたんですか?」

「それぐらいお見通しじゃ!出る寸前のところで我慢して、直腸が便をため込んでしまうことから始まる便秘が直腸性便秘といわれるものじゃ。別名『ちょっと待って便秘』じゃ!」

第2問「便秘には水分、食物繊維、運動が効く?」

仙人はまた問題を出してきました。「この『ちょっと待って便秘』には水分・食物繊維・運動が効く。○か×か?」

僕は即答しました。「もちろん でしょう!」

「ブー!これは大腸で便がたまった結腸性便秘への対応じゃ!『ちょっと待って便秘』は直腸に溜まった便をすっきり出すことを習慣化しないと治らんぞ!」

「では、どんな排泄ケアをしたらいいんですか?便意がわかる人ばかりではないんですけど」

「直腸は糞便が溜まったときに、『トイレに行きたい』という信号を脳に送り、脳がその信号を『便意』として認識するのじゃ。しかし、その機能が失われてしまっている人も多いの~。この場合には、さっきお前が言った食後の誘導が大事になるのじゃ!」

「でしょ!食後が一番ですよね?それも朝食後!」

第3問「なぜ食後が出やすいのか?」

「ではまたクイズじゃ。なぜ食後に便が出やすいと思う?」

食後がなぜよいのか?と聞かれて答えにつまってしまいました「・・・経験上かな?ほら朝ってウンコする時間でしょ?」

「生理学を勉強せい!食べ物が胃に入ってきた時に『胃-大腸反射』が起こり、腸が蠕動するのじゃ。そして糞便が直腸に送り込まれたら、排便の準備完了となる。あと朝方は副交感神経優位という排便しやすい体の状態になっておる。よって朝食後が排便のゴールデンタイムということになる。よい排泄ケアをするなら朝食後のトイレがポイントじゃ!」

「なるほど!それで朝がいいんですね」

「デイサービスでは朝の送迎の到着後じゃ!送迎車にガタゴト揺られたあと、トイレでドンといい便が出るわけじゃ」

第4問 排便によい姿勢とは?

「ラスト問題じゃ!排便姿勢のお手本にすべき、世界的に有名な人は誰かわかるか?」

「見当もつきません。誰ですか?」

「ロダンの『考える人』じゃ!あの姿勢、個室でウーンときばっておるようにみえんか?」

「ロダンに怒られませんか?そんなこと言って!」

「わしがロダンに注文したんじゃ。介護の現場にわかりやすいブロンズ像をつくってくれ、と言ってな。」

「ふざけるのはいい加減にしてください!仙人何歳なんですか?」

「ま、そう怒るな。あの格好を真似してみるのじゃ!」仙人は僕を椅子に座らせ、考える人の格好をさせました。

「この姿勢でウーンといきんでみよ。排便に大切な3つの力(①腹圧 ②直腸の収縮 ③重力)が合わさって便がでてくるぞ!」

考える人の格好でいきんだら、みるみるうちに便が出そうになってきました。

「わ、あやうくここで出そうになったじゃないですか!」

「な、こんなふうに生理学とか解剖学についてじっくり考えれば、便秘の人に下剤とか、浣腸とかする前に、いっぱいできることがあるじゃろ?オマエらはすぐmedicine(=医療行為)を考えるけど、ほんとはその前に使えるメデシン(=目手心)がたくさんあるじゃろう!」

「なるほど僕らが一番最初に使える は、『目と手と心』。生理学の知識などを現場に当てはめながら工夫していくことですね」

「そうじゃ!ユマニチュードもフランスからきたけど、考える人をつくったロダンもフランス人じゃ。どうせならこっちの『おフランス』をお手本にして欲しいの~」

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