【介護を楽しむ人は無敵】
先日、介護のスターを丹後にお呼びし、セミナーを開催しました。
栃木の宅老所はいこんちょの小林敏志さん。
岡山の介護職兼俳優の菅原直貴さんです。
小林さんは、自分の施設での出来事をリアルに目に浮かぶように話してくれます。
あたりまえの食事・入浴・排泄と趣味や居場所づくり・・・こんなおじいさんがいて、こんな風に関わって、とても楽しそうに(ほんとは大変そうなことも)話してくれました。「介護を楽しむ人は無敵だ」これは、一緒に話してくれた菅原さんの言葉ですが、
それを体現しているのが小林さんなのです。
【演劇的!その人に心地よい展開とはなにかを考えて関わる】
菅原さんは、介護に演劇を取り入れた経緯を、自分のおばあちゃんの介護をしたときの体験を通して話してくれました。
菅原さんが子供の頃、おあばちゃんの分のコロッケを食べてしまったそうです。
そうすると家にいたおばあさんが「あれ、ここにあったコロッケは?あの人にとっておいたのに〜」と言ったそうです。
「あの人って誰?」
「押し入れのあの人だよ」と返事が返ってきた。
このとき迷ったそうです。
「おばあちゃん、タンスの中に人なんかいないよ!」と言うか?
「あの人のぶん食べちゃってゴメン。冷蔵庫にあるもの出そうか?」
とおばあちゃんの言葉を受け止めるのか?
みなさんならどうしますか?突拍子もないことを言われて受け止めるか否定するか、
とても迷いますね。
もし認めたら、おばあちゃんの幻覚が進み、タンスの中に村ができたり、空飛ぶ犬が出てきたりしたら大変と考え、やはり否定した方がいいと考える人もいると思います。
さぁ、白黒はっきりさせようと
「おあばちゃんタンスに人なんかいないよ!」と言ったとしたら
「いるよ」
「いないよ」
・・・と水掛け論になり、最後は「じゃあタンスの中を見に行こうか!」となる。
これを菅原さんは、「あまり素敵な展開ではない」と言うんです。
考え方が演劇的!
展開が心地よいか?不快か?と考えた関わりって斬新。目から鱗でしたね。
これからの介護に必要であり、とてもすてきな視点だと思いました。
「その場、その場を生きている人に心地よい展開とはなにかを考えて関わる」
認知症の人は記憶力が低下していても、心地よいか不快か?はわかります。
なんとなく雰囲気や印象は残っているものです。
この雰囲気や印象が、あなたの今を大切にしています。
尊重しています、という関わりになっているか?
それとも
間違いは否定し、「アンタの間違いを白日の下にさらしてやろう」という雰囲気では
ずいぶんと違う「展開」が生まれてきそうですね。
記憶力がないから「どうせ覚えていない」ではなく、
心地よかった印象を心の風景に残してもらおうとする介護ができるといいなと思います。
演劇を知り、心地よい展開を意識して関われると素晴らしい。
「介護職はアーティスト」です。
ときには歌手に、画家に、噺家に、そして俳優になってみるわけです。