8月10日(木)、東京 機械工具会館にて
「介護現場におけるセラピストの役割」というタイトルのセミナーを開催しました。
ご参加いただいたみなさんには、
僕が介護現場でもがいてきた試行錯誤をお伝えしました。
また一緒に働いたケアスタッフさん、
関わらせていただいた利用者さんからの学びも一緒にお話ししました。
目次
介護現場での苦悩
リハビリの専門職(PT/OT/ST)は、
介護現場で苦戦する人も多いと聞きます。
私も医療から介護に職場が変わった時、体調を崩しました。
慣れない多職種での連携、決定プロセスのあいまいさに
心労がかさんでしまったのです。
「このまま続けるか、やはり病院に戻ろうか?」・・・
そんなふうに悩んだこともありました。
病院なら医師からの命令系統がはっきりしていたけど、
介護現場は混沌としていました。
決定権はほとんどの場合、医師にない、
けれど、
本人さんは意思の疎通が難しく決められない・・・
そんな混沌です。
しかし、それまで学んできた
解剖学や生理学、運動学、
そして
臨床で得た疾患学の知識は
とても役に立つという実感はありました。
ただし、この知識と技術は
患者さんの治療目的ではなく、
生活期の高齢者の日常を支えるために使う、
そんな視点が必要でした。
「医療モデル」から「生活モデル」へ視点の転換
講座に参加いただいたみなさんに
「医療モデル」から「生活モデル」への視点の転換を呼びかけました。
以下に医療モデルと生活モデルの違いを挙げます。
「医療モデル」
- 治療中の患者は動かさない
- 同じ環境(日課・ベッド・栄養・温度・湿度)で管理する
- 人体に対してアプローチ
「生活モデル」
- 暮らしの中で心と体を動かしていただく
- 十人十色の生活環境を大切にする
- 人生に対してアプローチ
医療モデルを批判したいわけではありません。
生きるか死ぬかの瀬戸際では、
人は強制的に安静にされ、
治療に専念する必要があります。
しかし、
病院を退院し、暮らしはじめた「生活者」に対して
「医療モデル」で対峙してしまってはたまりません。
苦戦している専門職をみると、
この医療モデル⇒生活モデルというモデルの転換ができていないことが原因のように思えます。
あるいは、しっかり視点の変更はできているけど、周りが医療モデルすぎて悩んでいる。
・・・そんな人もいます。
介護の現場で元気を引き出そうとするのだけれど
周りの職種が
「この人にはムリムリ」
「そんなことして転倒したらどうするの?」というブレーキをかけるのです。
医療モデルが大手を振って歩いてダメ出しをしてくる。
そんな後ろから撃たれるような、現実にぶつかってなすすべがない・・・といったケースもあります。
介護現場におけるセラピストの役割とは?
私は、介護現場におけるセラピストの役割として、
- 「いいケアの背中を押す」
- 「各人に合った環境や福祉用具を用意する」
- 「ご本人の力を大切にした介助方法を定着させる」
これらが大切だと思っています。
そしてなかには、
「生活リハビリの達人!」と呼びたくなる介護職さんがいるのも事実です。
そういう人達から学ぶ姿勢も大切です。
コミュニケーションの取り方一つでも人をダメにも元気にもしますもんね。
「評価」
それと、セラピストの重要な役割は評価だと思います。
介護現場は、案外評価が苦手なので、
「この人元気になったよね~」なんてこちらが言っても
「そうすか?前からこんなでしたけど~」とその変化に気づいていないことも多いです。
我々セラピストは
その経過をみつめ、
お年寄りの変化をしっかり伝える。
もちろん身体機能が向上するときばかりではない、
低下すれば低下したなりに、
どのような生活が可能か?
日常生活を見直すのです。
今後セラピストには以上のような役割がどんどん求められてくると思います。
つながって試行錯誤していこう!
ご参加いただいたみなさん、いかがだったでしょうか?
「介護はサイエンスにはならなくとも、アートにはなりうる」by 三好春樹
ぜひ一緒に試行錯誤するアーティスト集団になりましょう!
そして介護現場のセラピストでどんどんつながりましょう。
10月の講座のお知らせ
この講座は、次回
- 10月9日(月)名古屋企業福祉会館
- 10月10日 (火) 国労大阪会館
にて開催いたします。
時間は10:00~16:00です。
機能訓練指導員、看護師、介護職さん、
介護現場で働く方には共通の話がたくさん出ますので、
セラピスト以外の職種の方もどしどしご参加お待ちしています!
講演依頼もお気軽にお声かけ下さい!